投資の旅行記

投資(資産運用)は旅のようなもの。「旅としての投資」を通じて、日々感じたことや考えたことを記していく個人的な「旅行記」ブログ。

世界のマネーは今、どこに向かっているのか?

新興国資産の動きが荒い。

いや、新興国に限らず、相対的に高リスクと言われる資産で下げ圧力が強まっている。

2017年は投資家にとって非常に好都合で快適な環境だった。ボラティリティは低く、そして株価は上がる。チャートを振り返ってみると興味深い。

 

世界中のマネーがリスク資産に流れ込んでいた2017年

2017年の世界の主要株価指数のチャート。いずれも右肩上がりのトレンドが強かったが、特に中国・インドの伸びが目立つ。

2017年のチャート(Google Financeのデータを元に作成)

 日経平均は「秋の16連騰」の印象が強かったが、実際には「出遅れ後の巻き返し」だったことが改めてわかる。また好調だったS&P500よりも実際は中国・インド等の新興国の方がアウトパフォームしている。この時期、世界のマネーは新興国を中心に世界の株式市場に流れ込んでいたことが読み取れる。

一方、先の金融危機後の中央銀行による量的緩和でかさ上げされたマネーは株式市場だけでは受け止めきれずに、新たな流入市場を求め彷徨い、そして見つけた。ビットコインに代表される、仮想通貨市場という「リスク資産」である。

 

伝統的市場から溢れ出たマネーが流れ込んだ仮想通貨市場

以下は、2017年のビットコイン/USDのチャート。12月に入ってから猛烈な勢いで資金が流れ込み、その後年末を待たずにピークアウトしている。

2017年のビットコインのチャート。年後半に猛烈な勢いで吹き上がり、年末を待たずにピークアウトしている。

2017年のビットコイン/USDチャート(Yahoo! Financeより)

著名なヘッジファンドマネジャーであるジェフェリー・ガンドラック氏は「ビットコインは市場参加者のリスク選好度合を知る先行指標として機能している」と発言していたが、この上昇度合いも、またその後のピークアウトも、2018年初の株式市場の動きを予見していたのかもしれない。

 

2018年初来のチャート。1月は勢いよく上昇を続け、その後にピークアウト。それ以降の動きは、各指数によって明暗が分かれている。

2018年初来のチャート(Google Financeのデータを元に作成)

年初の急落以降は各指数で明暗が分かれている。米国のS&P500とインドのSENSEXは勝ち組、それ以外は負け組と言ったところだろうか。米中貿易紛争の文脈で中国市場の下落が注目されているが、実はイギリスやドイツ、そして日本も、年初の噴き上がりが中国よりも小さかった分、年初来のパフォーマンスとしては勝ち組グループに大きく劣っている。

 

中央銀行の方向転換により、マーケットは「引き潮」に突入

チャートは切り取り方によって見え方も大きく変わる。以下は、直近1年間で切り取ったチャート。日経平均は16連騰直前からのスタートになるため、この1年でのパフォーマンスは相対的には及第点と見えなくもない。

直近1年間のチャート。切り取り方で随分と印象が変わる。昨秋の高騰で「貯金」を作っていた日経平均はまずまず、逆にイギリス・ドイツの低迷が目立つ。

直近1年間のチャート(Google Financeのデータを元に作成)

とはいえ、現時点で上昇トレンドを維持できているのは米国とインドのみであり、実はこの2者も(チャートには表れていない)今週の動きは軟調に推移している。そして9月以降も市場のボラティリティを高めそうなイベントが続く。

そして何より、そうした「刺激」の背景で、米国FRBが粛々と市場から資金を引き揚げている。来年は欧州も続くだろう。表向きは異次元緩和を継続している日銀も、最近は緩和なのか緊縮なのかわからない動きも見せる。2017年に見られた異例の「満ち潮」市場は、徐々に「引き潮」に変化しつつある。潮目が変わる中で、世界のマネーは明らかに2017年とは違った動向を見せている。

 

「最後のひと噴き」はもう終わった?

上記のような見方は、個人的に現在の市場を「景気サイクルの後半、市場サイクルの終盤」と見ていることに起因している。ひょっとしたらまだまだ市場は吹き上げるのかもしれないし、実はもうピークアウトしたのかもしれない。ただし市場サイクルの終盤を語る際、「最後のひと噴き」に自然と関心が向く。

市場が過熱し、投資家が熱狂して、最終的にそれまでリスク資産に手を出さなかった層まで市場に参加した時、市場はピークを形成しその後盛大に崩壊する―。「靴磨きの少年」の話で語られるような異様な熱狂は、今の市場を覆っているのだろうか?これから訪れるのだろうか?それともすでに過ぎ去ったのだろうか?

こうして考える際、ふと「異様な熱狂」が発生した市場が思い浮かぶ。そう、またしても、仮想通貨市場だ。ひょっとしたら、本来的に市場サイクルの終盤で発生するはずだった熱狂エネルギーは、2017年末に仮想通貨市場が吸収してしまったのかもしれない。そう見ることもできなくない。

そして仮にそうだとすると、すでに市場サイクルは崩壊寸前と言うことになる。